国際ベンチャーキャピタリスト 奮闘史

新米ベンチャーキャピタリストが投資を通じた新興国の資本市場活性化に奔走するブログ

人材育成のプロモーション~M国への出張~

「そろそろK君もM国に出張してもらおうかな」

留学生が本国に帰国し、次年度の事業・予算編成も終わった2018年6月のある日出張の話が上がった。

基金の事業は毎年4月に始まり翌年3月に終わる。4月-6月は前述の事業・予算編成を行い、これを理事会に附議する。並行してその年の9月日本に留学する事を目指す候補者の採用やビザ申請を行う。

その後7月-8月にかけて基金のプロモーションと称して提携する大学と共にM国に出張する、プロモーション等を通じて基金に興味を持った候補者は11月頃開始する次年度のプログラムに応募するというわけだ。

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プロモーションはM国の優秀な学生を採用する事、現地の政府高官に対して基金をアピールする場であることから年間スケジュールの中でも重要なイベントの一つだ。自分が支援する国を一度見てみたかった事からこのオファリングは渡りに船だった。

狂犬病とか伝染病があるんでしょ?大丈夫?」

出張に向けてワクチンを何本も注射したこと、いざとなれば駐在員専用の病院に入院するオプションを伝えたが、彼女や家族から心配の声が相次いだ。

「どこかの役員はホテルのシャワーの水がたまたま口に入っただけで当たったらしい」

出張のギリギリまで色々な人からM国の衛生状況やプロモーション全般を自分で仕切る事を意識すると自然と緊張感が高まる一方、不思議なもので未開のフォロンティアに対する興味は高まった。

なんだ、思った以上に発展しているじゃないか!日本を出発約6時間後、僕がM国の空港に降り立った時の率直な感想だ。空港設備はまだ新しく入国もスムーズだ。服部正也氏の手記ルワンダ中央銀行総裁日記で描いているような新興国を想像していた僕は拍子抜けした。
きっと会社の同僚が僕を驚かせようと色々大袈裟な話をしているのだろうな。到着ゲート付近でたむろし、片言の日本を使う白タクのドライバーを無視し、空港内の両替所に行く。
「ヘイミスター、ここのレートは良くないよ近くにもっといい所があるから案内させてよ。」ずっと無視を決め込んでいるにも関わらず粘り強く話しかけてくる違法両替業者にある種感心しつつ、100米ドル(新札)を現地通貨のチャットと交換した。出張期間2週間で僕は日本円換算で十万円相当の米ドルを用意したが、現地通貨に交換したのはほんの一部だ。M国は二重為替制度を採用しており、よほどの事がない限りはどこでも米ドルが使用出来る。こうした事情は調査済みだったことから交換は最低限にしようと思っていた。空港の外に出るとモワッとした東南アジアの空気を感じた。これから2週間何とか乗り越えられたらいいな。空港のタクシーから見る風景を見ながらそう感じた。


補足:M国が特殊なのかは定かではないが、米ドルと現地通貨の交換レートは紙幣が新札か否かで変わる。新札でないと不利なレートを提示される。100米ドル札なんて怪しいマフィア映画でしか観たことが無かったので当時は困惑した。