国際ベンチャーキャピタリスト 奮闘史

新米ベンチャーキャピタリストが投資を通じた新興国の資本市場活性化に奔走するブログ

アメリカの金融政策が新興国市場に与える影響

8月25~27日、アメリカではジャクソンホール会議が開催された。同ジャクソンホール会議にてFRBパウエル議長はアメリカ経済とりわけインフレに対する懸念を示し、FRBとして引き続き強い姿勢(つまり今後も金融政策引き締めで望むという事)を示した。

パウエル議長の発言に金融市場は即座に反応し、26日のダウ平均株価は1000ドルを超えて下落、為替市場も26日中はドル円レートは137円台で安定していたものの、その後じわじわと円安になり、9月8日には1998年 24年ぶりに140円を付けた。

円140円台に下落、24年ぶり円安水準更新: 日本経済新聞

 

アメリカの金融政策の影響は新興国に大きな影響を与えている。5月にスリランカが外貨建て債務のデフォルトに陥ったが、ナイジェリア、パキスタン、エジプト、ガーナと言った国々は外貨準備高不足に陥っており、野村総合研究所によるとパキスタンとガーナでは、外貨準備高がそれぞれ年初から33%、29%減少したという。先進国は基、新興国は新型コロナによる経済活動の縮小、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とした資源高、そしてアメリカの金融政策による三重苦の様相を呈している。

僕はありがたい事に未だにミャンマーと仕事上の関わりがあり、現地の人間とほぼ毎日やり取りをしているが、当地の状況は極めて切迫している。ミャンマーは2021年のクーデター以来、アメリカやヨーロッパ諸国の金融制裁の対象となっており、不安定な情勢に起因して、観光客、海外からの投資が急速に縮小しており、加えてアメリカやヨーロッパ諸国から経済制裁を受けている。ミャンマーチャットはこうした事象を受けてドルに対して急速に下落しており、2019-2021年まで概ね1ドル/1500チャットで推移していたが、直近では1ドル/2100チャットを超えており、ブラックマーケットに至ってはすでに1ドル/3100チャットをつけているという。軍事クーデターによる国際的孤立、アメリカの金融政策二重の影響をうけているという事だ。

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ドルに対する通貨安の対抗策としてミャンマー中銀は、今年の4月より、一定の条件を満たす法人・個人を除いて、ドル資産のチャットへの強制転換を行っている。いわば法人と個人のドル資産を通過防衛に利用しているという事だ。

私の友人に海外の金融機関で働いており、ドル建ての給料を貰っている、彼によるとドルの上昇により一見所得面でメリットを得ているように見えるが、ガソリンなどの生活用品の上昇が圧倒的に高く※、日々の生活に困窮している人が日に日に増えており、街中ではホームレスが増え、強盗などの犯罪も増加し、これまでのように仕事上がりに街に繰り出すこともせず、部屋に引きこもる生活が続いているという。

※国際通貨基金の最新の報告書によると、2022年4月のミャンマーのインフレ率は14.1%となり、過去10年で最高値を記録した。

日本においてもコストプッシュ型のインフレが懸念されており、今年の秋から様々な生活用品の値上げが行われると報道されている。アメリカの金融政策に私たちは大きな影響を受けているが、世界ではより大きな被害を受けている人たちがいる事を知っていただけるとありがたい。世界は想像以上に繋がっているのだ。