国際ベンチャーキャピタリスト 奮闘史

新米ベンチャーキャピタリストが投資を通じた新興国の資本市場活性化に奔走するブログ

金融危機前夜?不安定化する金融市場

冬の寒さが落ち着き、東京の桜の開花も発表された3月13日の週は前の週アメリカ時間で発表されたSilicon Valley Bank(SVB)の事業停止を受けた混乱から幕を開けた。

SVBはシリコンバレー等のスタートアップからの預金や貸出を事業として行っており、2022年末の総資産は2,090億米ドル、全米16位の金融機関である。

同行の直接の破綻の原因は端的にいうと運用、具体的には債券運用の失敗である。

近年はスタートアップバブルと言われるように、多くの企業がエクイティで資金調達を行っていたおり、受け皿としてSVBはこれらの調達資金を預金として預かり、債券で運用していたという訳である。

では何がきっかけで今回の事態に陥ったかというと発端はベンチャーキャピタルによる、ベンチャー企業に対するSVB宛資金の引き上げで要求である。一般的にベンチャー企業は資金調達で受け取った大量の資金を金融機関のSavings Accountに預け、金利による安定収益を得ようとする。SVBは受け取った大量の預金を米国債やMBSで運営するが、昨年上旬からのFRB(連邦準備制度)による段階的な金利引き上げにより、運用する債券が急激に含み損を抱えていた※。金利の上昇はベンチャー企業の事業面でも影響を与えていたことからSVBからの資金引き上げが集中し、引き上げるために、資金を捻出する必要があるSVBは含み損の債券を投げ打っていたのだ。

※金利と債券価格は逆相関の関係ある。簡単にいうと、金利が上がると、上がる前に保有していた債券は新たに発行される債券に対して魅力が下がり売られて、価格が下落するという訳だ。

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今回のSVBの事業停止による市場の混乱と信用収縮を食い止めるため、14日(アメリカ時間13日)FRBとFDIC(連邦預金保険公社)は共同でSVB宛の預金の全額保護を発表し、ジョー・バイデン大統領もアメリカの金融市場の健全性や必要な処置を講ずる旨声明を発表するなど速やかな火消しを測った。これを受けて市場の混乱は一時的に回復したが、翌日以降は次のSVBを探す動きが顕著となり、First Republic Bankが標的となった。こちらはアメリカの大手金融機関11行が300億米ドルの共同融資を行う旨すでに発表されたが、今度はアメリカから遠く離れたスイスの名門金融機関のCredit Suisseの経営危機まで波及した。同行はガバナンスの不備、主要ビジネスの低迷等大きな問題を長きに渡り抱えていたが、本件を受けて炎上した形だ。なお、欧州には少なくともあと1行懸念される金融機関があるので筆者は同行を注視している。

前述の金融機関の経営危機は個別の様相を呈しており、リーマンショックのような、伝染病のような波及する可能性は低いと現状様々な有識者は語る。しかしながら、信用収縮と景気後退のダブルパンチはリーマンショックにおけるサブプライムローンと同じかそれ以上の広範囲の影響が今後あるかもしれない。パンデミック、戦争からの金融危機の蓋然性を私たちは目撃している。