国際ベンチャーキャピタリスト 奮闘史

新米ベンチャーキャピタリストが投資を通じた新興国の資本市場活性化に奔走するブログ

複雑化する国際政治と経済

明けましておめでとうございます。今年も主に国際経済と政治に関して気になった事を記事化して参りますのでよろしくお願いします。

2023年1月4日大発会の日経平均株価は昨年12月31日から一時400円以上値を下げ、最終的には9ヶ月ぶりの安値となる2万5716円86銭をつけた。相場を下げた要因は世界経済の減速だという。

卯年は相場の格言で「卯跳ねる」と言われ、また、今年は2024年米大統領選挙の1年前という事もありアノマリー的には市場には追い風だっただけに何とも不気味な感触を受けた。

2023年の国際政治及び経済のリスクについてだが、ユーラシアグループは下記の通り10大トップリスクを予想している。

1 ならず者国家ロシア

2 絶対的権力者習近平

3 大混乱生成兵器

4 インフレショック

5 追い詰められるイラン

6 エネルギー危機

7 世界的発展の急停止

8 分断国家アメリカ

9 TikTokなZ世代

10 逼迫する水問題

https://www.eurasiagroup.net/siteFiles/Media/files/2022_12_26%20Top%20Risks%20FINAL%20DRAFT%2004%20jh%20-%20Japanese.pdf

ユーラシア・グループは、著名な国際政治学者のイアン・ブレマー氏が社長を務め、1998年以来、毎年、年初に当該年の世界政治や経済に深刻な影響を及ぼす地政学リスクを予測しており、金融に関わらず様々な業界関係者に注目されている。ちなみに同社がNo.1に挙げた中国のゼロコロナ政策失敗は昨年度末に残念ながら当たってしまった。

今回発表されたリスクの中でとりわけ印象に残っているのは3の大混乱生成兵器、具体的にはAIに代表されるディープデック技術の台頭による世論工作や社会混乱だ。

技術の進歩により、どのような政治的な立場にあろうと、すべての政治指導者にはこれらのツールを活 用することに構造的利点が生まれるだろう。政治家は AI の進歩を利用し、低コストの 人間のようなボット軍団を作り、過激な候補者を持ち上げ、陰謀論や「フェイクニュー ス」を売り込み、分極化をあおり、過激主義や暴力さえも進行させるだろう。今年は、 米国の大統領選予備選の初期段階(リスク No.8 参照)や、スペインやパキスタンの総 選挙で、間違いなくこのような現象が見られるだろう。

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AI技術は言うまでもなく我々の生活を豊かにする便利な技術である一方で、独裁国家や特定の政治思想を持った集団が世論を工作する意図を持った場合低コストかつ高い効率で達成できる可能性がある。例えばTwitterのボットを使えば、ツイートやフォローを通じて特定の政治思想を持つ集団やそのような思想に興味のある個人を扇動する事が可能になる。現に今この記事を執筆している1月9日現在、ブラジルの首都ではSNSを通じて集まったボルソナロ前大統領の支持者が暴徒化し、大統領府などが一時占拠された。ブラジルでの出来事が必ずしもAIによる物とは限らないが、人々のコミュニティがSNS等フラグメント化することで、悪意を持った煽動者による影響を受けやすい環境が形成されていると思われる。

2023年の国際政治と経済は引き続き混迷を極め複雑化する事が想定されるが、むしろこういった時期だからこそ、世界レベルの課題が浮き彫りになっている側面もある。世界が直面する課題に目を背けず考え、出来ることから行動するのが良いのではないかと思う。例えばディープテック技術のリスクを理解しつつその可能性について勉強してみる等はその一例だ。