国際ベンチャーキャピタリスト 奮闘史

新米ベンチャーキャピタリストが投資を通じた新興国の資本市場活性化に奔走するブログ

米国中間選挙とベンチャー企業 2-②

2022年11月9日に実施された米国の中間選挙の結果が概ね確定した。アメリカの主要メディアは16日、野党共和党が定数435議席の下院で218議席を奪取し7議席を残した上で、4年ぶりの多数派となった事を報じた。一方で、上院については共和党の獲得議席は伸び悩み、残り2議席を残し、定数100議席中48議席となり敗北した※。バイデン政権はレームダックとなった事は変わらないものの、検討したと言える。他、注目されていたトランプ前大統領の2024年大統領選挙への立候補は不透明感が出る結果となった。

※残り2議席を共和党が獲得し、上院がデッドロックとなった場合、副大統領が投票する事で採決が決まる。つまり民主党は副大統領のカマラ・ハリス女史の投票で上院での法案を通す事ができるという訳だ。

今回の中間選挙の結果、中断が懸念されていた米国によるウクライナ支援は継続する見込みとなり、また、民主党が取り組んでいたインフレ対策等諸々の政策は継続することが見込まれる。他方で、下院でねじれが発生したことから、共和党の動き次第では政策にある程度の遅れが生じる事となり金融市場は高いボラティリティの中推移することが見込まれる。

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2021年と比較して2022年はベンチャー企業にとっては冬の時代だ。EYはレポートで下記の様に述べている:

2022年第2四半期の世界のIPO市場では、件数は305件、調達額は406億米ドルで、それぞれ前年比54%減、65%減となりました。2022年上半期では、件数は630件、調達額は954億米ドルとなり、それぞれ前年比46%減、58%減となりました。

https://www.ey.com/ja_jp/ipo/ipo-insights/2022/ipo-insights-2022-10-21-cross-border-topics

周知の通り、2月のロシアによるウクライナの進行を契機にインフレが急激に進み、資材等は高騰し、今も収まる気配はない。インフレを抑えるために世界各国の中銀が実施する利上げの影響も甚大だ。つまり、調達能力が上場企業と比較して高くないベンチャー企業は、商品・サービスの生産コスト(資材調達費、人件費等)及び会社の運転資金(具体的には銀行借入)調達コスト増に苦しまされている。また、ここもとではリセッション(景気後退)観測も出ており、製品・サービス受注先からの値下げ等の圧力を受ける企業は多いだろう。

ベンチャー企業は、事業拡大の節目としてIPOないしはトレードセール(身売り)で大きな運転資金を調達、それまでは多くは赤字体質で、未公開株投資を行うファンド勢から資金に頼る場合が多い。一方でファンド勢もリスク管理の観点で無尽蔵に資金を拠出できる訳ではない事から、米国のインフレ、利上げがマイルドになるまでは当面厳しい状況が続くことが想定される。

このような状況下、キャピタリストとして僕もストレスの多い(スタートアップの創業者とは比較にならないが)日々を過ごしているが、ある起業家でベンチャーキャピタリストは今の時代を好機だと言っていたことが心の支えになっている。

彼によると、「これまで春ないしは夏の楽な環境下で経営改善をしてこなかった多くのスタートアップ企業が苦境に陥るだろうが、秋あるいは冬の厳しい時代に経営改善を行った企業又はその時期に生まれた企業は筋肉質な体質になっており、景気が好転した際は大きく成長するだろう。私は今の環境を投資のチャンスとして捉えており、むしろ投資を拡大するつもりだ」。

数々の苦労を乗り乗り越えた起業家の言葉は重い。頭が上がらない。ちなみに様々な著名人(起業家、俳優、政治家)が人生の苦境に陥った際どのように乗り越えたかオムニバス形式で記載している下記は興味深いので是非読んでもらいたい。