国際ベンチャーキャピタリスト 奮闘史

新米ベンチャーキャピタリストが投資を通じた新興国の資本市場活性化に奔走するブログ

一層孤立化が進むミャンマー

ミャンマーは2021年のクーデター以降、軍政権による度重なる国際社会とずれた政策及びマクロ環境の急速な変化に起因して疲弊している。

前回の記事でも紹介した通り、ミャンマーチャットは米ドルなどの基軸通貨に対して大幅に安くなっており、国内経済はインフレ高に悩まされており弱体化している。

ミャンマー軍のクーデター当時のシナリオでは2022年の秋には2回目の選挙を実施する想定だったが、いつのまにかこれが来年まで延期されている。クーデターの名目は2020年の選挙における与党NLDによる不正だったが、予想以上に根強い民主化勢力による反発を軍が強権で延期し続けるうちにタイミングを失った形である。

日を追うごとに逼迫するミャンマーであるが、気になるニュースが9月の上旬発出された。日経新聞によると、金融活動作業部会(FATF)が10月ミャンマーのブラックリスク(高リスク)入りを検討しており、概ね確定する見通しだという。現状ブラックリスト化されている国は北朝鮮とイランの2カ国、これらの国々との取引は様々な制約があり、そのような国々と同列となる見通しのミャンマーの国際的孤立は必至だ。

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FATFはマネー・ローンダリング対策における国際協調を推進するため、1989年のG7アルシュ・サミットにおいて設立された政府間会合であり、経済協力開発機構 (OECD)内に事務局が置かれている。FATFはOECD 加盟国を中心に37か国・地域及び2つの国際機関で構成されており、それぞれ加盟国の外務省・通貨金融監督当局・法務警察当局が出席している(日本からは、財務省、警察庁、金融庁、法務省、外務省が出席している)。FATFは2001年9月の米国同時多発テロ以降、テロ資金供与対策に関する国際的な協力についても指導的な役割を果たしており、国際社会におけるマネーロンダリング及びテロ資金供与防止(いわゆるAML/CFT)の基準を策定している。

FATFの勧告には法的拘束力はないものの、国際社会、例えば本邦金融機関からしたら、北朝鮮やイランと並ぶ高リスク国と取引を行うことは各国当局や株主との関係やレピュテーション上避けたいはずであり、政治の不安定とも相まってミャンマーから撤退する企業が今後ますます増えていくことが懸念される。このようにFATFはソフト・ローとしてロシアに対するSWIFT排除と似たような効果、すなわちミャンマーにおける投資の退避を進めることが想定される。

国際社会から孤立するミャンマーに危惧するとともに、現状が打開される事を強く望む。