国際ベンチャーキャピタリスト 奮闘史

新米ベンチャーキャピタリストが投資を通じた新興国の資本市場活性化に奔走するブログ

ついにブラックリスト入りしたミャンマー…

去る10月21日、金融活動作業部会(FATF)がミャンマーをブラックリストに追加すると発表 した。これによりミャンマーは北朝鮮やイランと同格になった事になる。

FATFについては「一層孤立化が進むミャンマー - 国際ベンチャーキャピタリスト 奮闘史」で記載したが、ミャンマー関連のビジネスに携わっている人間の間では、ブラックリスト入りの判断は来年2月頃とある種のコンセンサスがあった事から今回のニュースはサプライズだった。筆者も、仕事を共にするミャンマー人からこの一報を受けた時は電車の中で思わず「マジかよ」と声を上げた。

FATFから正式な報告レポートが10月28日現在まだ確認できないことから、ブラックリスト入りの要因は明らかではないが、8月発出されたレポートを参考にすると主な指摘として下記が挙げられた。

1.増加する非金融ライセンス業者に対する監督の不備

2.監督当局が行う監督内容の精度、行政指示の実効性、監督官の専門性

3.統計データの不備

APG-Myanmar-FUR-2022.pdf (fatf-gafi.org)

 

1については、軍部によるクーデター以降、金融ライセンスを持たない業者を通じて海外に資産を動かす流れが個人・法人の間で事実活発化している事、貿易業を営む企業が地下銀行「フンディ」を介して決済を行う事例が増えている事が問題視されたと推察される。続いて、2については自分が企画部門に在籍していた際、監督当局の人間に対して研修を行った経験もあり「まあ、そうだよね」という感想だ。他方で3を勘案しても、ミャンマーはまだまだ発展途上の段階であることも踏まえもう少し寛大に見てほしいという気持ちもある。

FATFのブラックリスト入り後、何が起こるのかについて、多くの日系企業の間ではNLD政権以前に戻っただけという人もいる。例えば、銀行関係者など長年ミャンマーでビジネスを行うプロは多少取引先のデューデリジェンスが厳しくなろうとも、ミャンマーを撤退する方針では現状ないという。肝の据わり様に頭が下がる。一方で、これだけ世界の金融ネットワークがシームレスになる中、本当に何も変わらないのかその不透明感にも釈然としない。例えば米国が財務省外国資産管理室(OFACが)をFATFの今回の処置を理由に独自の制裁を加えないか心配だ。FATFの進展については引き続き注視を続けたい。

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平和なミャンマーでまたローカルフードを楽しめる日が早く訪れる事を祈る。写真はミャンマーのローカル麺料理。日本なら例えば高田馬場で食べられるかもしれない(良い店が有れば教えてください!)