国際ベンチャーキャピタリスト 奮闘史

新米ベンチャーキャピタリストが投資を通じた新興国の資本市場活性化に奔走するブログ

米国中間選挙とベンチャー企業 2-①

11月8日、日本は442年ぶりの皆既月食に沸いていたが、太平洋遥先の米国では民主主義の一大イベント中間選挙が行われた。

中間選挙は、4年に1度行われる大統領選挙の「中間」の年に全米で一斉に行われる、連邦議会の上院と下院の議員選挙及び州知事選挙である。中間選挙は11月第1月曜日の翌日の火曜日に行われることが決まっており、2022年は11月8日が投開票日だ。

今回の中間選挙で争われる上院・下院別の議席数や任期について、NHKの特設サイトが分かりやすく解説しているので紹介しよう。

上院の定数は100議席。各州から2人が選ばれ、任期は6年ですが、このうちのおよそ3分の1が2年ごとに改選されます。現在は無所属を含む民主党系と、共和党がともに50議席で同数となっていますが、採決で同数の場合は議長を務めるハリス副大統領が1票を投じるため、民主党が事実上の多数派となっています。

下院の定数は435議席。各州の人口比率に応じて配分され、任期は2年。今回すべての議席が改選されます。現在は、民主党が220議席、共和党が212議席で、民主党が多数派となっています。つまり、現在は、民主党が上下両院で主導権を握っている状況です。

また、今回の中間選挙では、50の州のうち、7割以上にあたる36の州で州知事選挙も行われる予定です。

アメリカ中間選挙とは?「基礎」を解説 | NHK

中間選挙は大統領に対する通信簿と言われている。その所以は米国大統領の与党が議会の上院と下院を野党に奪取されると三権分立の仕組み上、残り2年の政権運営が厳しくなり所謂「レームダック(死に体を指す政治用語)」となることからである。

野党(今回の選挙では共和党)からしてみれば、中間選挙で下院及び上院を共に制すると、2年後の大統領選挙に向けて弾みがつくこととなり、結果次第では、立法・行政を共に制することとなり、少なくとも次の中間選挙までは安定的な政権運用が可能となるわけだ。

出典:American Center Japan

今回の中間選挙の主な争点は何だろうか?米ギャラップ社が10月実施した世論調査では下記が挙がった。人工妊娠中絶と移民対策はこれまでも争点だったが、今回の中間選挙ではやはり、記録的なインフレに対する対策に注目が集まっている。

  • 記録的なインフレ対策
  • 人工妊娠中絶
  • 移民対策
  • 犯罪

連邦準備制度理事会(FRB)は、2022年3月、2020年3月から続けてきたゼロ金利政策及び量的緩和策を解除し、以降、極めて速いペースで金利の引き上げを行ってきた(11月現在の政策金利は3.75-4.00%)。FRBが金利の引き上げを行った背景は、アフターコロナに起因した"バブル"への対策だったが、なにより大きなきっかけとなったのは、ロシアによるウクライナ侵攻とこれに付随した、インフレであった(ロジスティクスの混乱、原油流通の減少など)。デフレ国家日本においても、今年より、じわじわと値上げ(インフレ)が広まっているが、こと米国においては、外食の価格が2~3割(例えばラーメン一杯が2,800円!)、ガソリン価格に至っては今年の6月にレギュラーガソリンの全米平均の小売価格が前年度比60%上昇、過去最高値をつけるなど、国民の生活へのダメージは極めて大きい。こうした事情もあり、政権与党である民主党には大きな逆風が吹いている。

言うまでもなく、米国の中間選挙は世界経済に大きな影響を与える。米国が行う金融政策は今後成長が期待される、グロース株市場に影響を与える事となり、筆者の投資先各社のIPOなどのエグジット戦略にも影響を与える。加えて、米国の動向は、為替市場にも大きな影響を与え、新興国経済にも大きな影響を与える。

中間選挙の大勢は日本時間9日の午後決まる予定だが、次回の投稿では、選挙の結果とベンチャー市場と新興国経済への影響について考えてみたい。