国際ベンチャーキャピタリスト 奮闘史

新米ベンチャーキャピタリストが投資を通じた新興国の資本市場活性化に奔走するブログ

シンガポールのこと②

2019年の年末から2020年5月現在において世界を震撼させている新型コロナの蔓延では、マスクの支給に然り、給付金の支給に然り、日本政府の対応の遅さが度々批判されている。

その一方で、中国政府の都市封鎖(ロックダウン)、国民の移動監視等一連の措置は中国共産党の強権を浮き彫りにすると同時に、一党独裁政権ならではのスピード感のある対応は世界の一部では賞賛された(中国国内において新型コロナの流行を隠蔽していた事等、数々の疑惑についてはここではあえて触れないものとする)。

シンガポールに戻ろう。シンガポールは1963年8月英国からの独立を宣言、マレーシアの一部となった。しかし、民族構成上、多数の中華系住民が暮らすシンガポールと、マレー系住民への権利を優先するマレーシア本国政府は政策などで度々対立し、1965年8月9日シンガポールは再び独立した。

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英国と言う後ろ盾に加え、マレー半島の最南端である意味孤立していたシンガポールは独立当初は経済的に不安定であり、2015年3月23日に逝去したリー・クアンユー初代首相は時に開発独裁とも揶揄される強権的かつ民主主義的な経済政策でシンガポール経済を大きく発展させた。

補足:開発独裁(Developmental Dictatorship)とは、経済発展の為には政治的安定が必要であるとして、国民の政治参加を制限することを指す。

シンガポールは立憲共和制、国家を運営する政治家は選挙によって選ばれる。主な政党は現与党のシンガポール人民行動党(People's Action Party: PAP)、シンガポール労働者党、国民団結党、シンガポール民主党等の7党で構成され、31の選挙区に割り当てられる議席を巡って争う。これらの区は複数人を選ぶグループ選挙区(GRC)と一人区(SMC)に分けられその時与党によって都度変更されている。なお、元々は単純な小選挙区制であったが、1984年の総選挙で与党の得票率が急落し、危機感を覚えた与党はSMCも残す一方で定数4-6人のGRCを導入し、第一党が議席を総取りする方式を導入した。つまり、選挙区や制度を都度改定し、常にPARにとって有利な状況を作り出しているとも言える。

 独裁政権は往々にして腐敗や汚職を招きやすい、これに起因して国民の不満が高まり政権交を促す。それにも関わらず、PAPが引き続き与党の地位を維持しているのは、同党の政策によって達成された経済的利益や強力なリーダーシップに基づき構築された社会インフラがきちんと国民に還元されていることの証左だろう。

 新型コロナに対する各国政府の対応を比較して民主主義のあり方について再度考えるのは有意義かもしれない。