「ワタシノナマエは○○デス。ニホンデベンキョガンバリマス。スキナタベモノハラーメンデス」。企画部門への異動後2週間目のある日、沢山の人で賑わう役員ダイニングで僕は呆然と佇んできた。新しい部署での業務が財団法人の運営?花形の企画マンに転身したはずなのになぜ…?
僕が就職活動を行っていたのは2007年、周りの同級生はドラマ「ハゲタカ」に登場する敏腕ファンドマネジャー鷲津に憧れ、金融機関、とりわけ外資系金融機関に殺到した。もちろん僕だって一緒だ。
アメリカ在学時の苦しい就職活動を乗り越え、外資系では無いにしろ日本ではそれなりに知名度がある金融機関に就職した。鷲津のように日本を揺るがす様なディールを将来受け持つはずの僕がなぜキャリア半ばで慈善事業に携わらなければいけないのか?
課長との面談で思わず出た言葉はこれだ「えっと、証券会社がなぜ財団法人を運営しているんですか?営利企業の当社がなぜこんな事をしているんですか?」それに対し、上司は飄々とした様子で「おーいい質問だね」と答えた。いやいや、普通な質問でしょ。
「うちの会社は26年くらいM国を支援しているんだけど、ずーっと日本人がハンズオンでこの国の資本市場発展に関与しているんだよね。支援自体は悪く無いのだけど、この国はいつかは自立する必要があるし、ウチとしても早い段階でビジネスチャンスを獲得しないと株主に面目が立たないんだよ。だからM国の政府職員を日本に招聘して、しっかり勉強して貰って国に還元してもらうんだ。君のこれまでの仕事と毛色が違うのはよく分かるけど頑張ってみて。」上司の異様なテンションに押されながら、業務を引き受けたものの、学生達の半年間に渡る日本での生活をサポートし続ける自信がこの時点でではなかった。
ただ不思議なもので、学生達との何気内会話や、屈託のない笑顔を見ると胸の底からやる気が溢れ出た。きっと有意義な日本の生活を送ってもらうぞ!
親睦を深めるためにはまず飲み会だ!僕は早速スマホで「彼ら彼女ら」に受けそうなレストランを探した。
補足:ハンズオンとは金融機関等が投資先企業の経営に主体的に関与する投資形態。金融機関は投資先企業に対し、役員を派遣する等、投資先企業の企業価値向上のためのコンサルテーションなどを実施する。